凪とスウェル
右京君の言葉に、あたしは目を開いた。


「それを持って行けば、アイツはもう言い逃れ出来ないよ。

お前が好きだっていう、何よりの証拠だから」


「右京君…」


「お前、まだ時間大丈夫?」


「え?あ、あぁ…。

お父さんにはちゃんと言ってあるから、平気だけど…」


「今からアイツのアパートまで送ってやるから、隆治に会って来い」


「い、今からっ?」


思わず声が裏返った。


「こんな話を聞いて、お前今夜眠れるのか?

こういうのはな、早い方がいいんだ。

アイツ、明日は定休日で仕事が休みだし。

多分、まだ起きてるんじゃないかと思う」


「で、でも…。

あたし達、もう会わないことに決めたばかりなの…」


「はぁ~?何やってんだよ!」


右京君が声を荒げる。


「だ、だって…。

会えばどんどん好きになってしまうし…。

もう忘れなきゃって思って…」


あたしの言葉に、右京君が大きく息を吐いた。


「あー、クソッ」


ハンドルをドンッと叩く姿に、ドキッと心臓が跳ね上がった。
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