凪とスウェル
俺のパンを買ってくれるその女の子に会ったら、話したいことは沢山あった。


嬉しかったし、感謝しているって、そう伝えたかった。


だけど、その相手がまさかすずだったなんて。


そんなこと、一体誰が想像出来ただろう。


島に居た頃も、すずは俺を勇気付けてくれる存在だったけど。


こうして3年以上が経った今も、俺を救ってくれるだなんて…。


なんだかやけに感動してしまった。


だけど、妙に気になることがあった。


久しぶりに見るすずは、島に居た頃のすずとは随分違って見えた。


もちろん相変わらずの美人だけど、顔色も悪く、目に力がない。


あんなに輝いていたすずだったのに、今漂う雰囲気はどこか悲しげで。


もしかして、どこか身体の調子が悪いのだろうか。


この3年の間に一体何があったのだろうとかと、すごく心配になった。


千春さんの手前、結局何も聞けないまま。


すずは体調が悪いのか、片岡と一緒に帰ってしまった。


その後ろ姿を、俺はただじっと見守るしかなかった。
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