凪とスウェル
しかも、籍を入れるだけはダメ。


二人きりで海外挙式もダメ。


きちんと披露宴をしろと言うのだ。


一体、どこまで口を出すつもりなんだろう?


「あーーー!もうっ!

俺を生殺しにする気か!」


隆治があたしの後ろで暴れている。


こんな隆治が高校の頃、よく何もせずに耐えたものだと感心してしまう。


「なぁ…。こっそりしようか」


隆治がそっと、あたしの耳元で囁く。


「きょ、今日はダメだよ」


「じゃあ、いつだったらいいんだよ!」


「わかんないけど、とにかく。

会社帰りはまずいよ…。

あたしがここに来てること、自転車を見ただけで、ご近所さんにバレバレなんだから…」


この島におばあちゃんの味方は大勢いるもんね。


長時間あたしがこの家に居たとか、告げ口でもされたら困るもの。


「じゃあ、やっぱ。

デートの途中でラブホのパターン?」


そ、そんなこと言われて、うんって頷けるわけないじゃん!


「でもさぁ、休みが全然合わねーじゃん!

俺、もう待てねーよー。

お前、男の部屋に来て、無事帰れると思うなよ?」


隆治が急に低い声を出したから、あたしは慌ててその場を離れた。
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