凪とスウェル
「あーコイツ転校生だよ」


「あっ、知ってる!

八神君のクラスに転校生が来たって、みんな騒いでた。

あなたがそうなのね?」


あたしは軽く会釈をした。


「私、湯本香澄(ゆもと かすみ)っていうの。よろしくね」


「あ、えと。植村すずです。よろしく」


そう言って口角を上げると、彼女は無邪気な顔で笑った。


そうこうしているとフェリーが到着し、あたし達は船内に乗り込んだ。


自転車を停めると、三人で客室へ行き、八神、湯本さん、あたしの順に三人席に腰掛けた。


席に着いた途端、湯本さんが八神に話しかけ始める。


あたしは二人が話してる内容がよくわからなくて、仕方なく携帯を意味もなくいじった。


この状況ってさ、明らかにあたし、二人の邪魔じゃない?


八神も、湯本さんも何なの?


今までずっと次の便で来ていたくせに、どうして二人して早い便に変えたんだろう。


毎朝こんな状況になったら、たまったもんじゃないわね。


思わず、小さなため息が漏れた。


結局フェリーが到着するまで、あたしは二人の会話には一切入れず、25分がやたら長く感じてしまった。


本土に着いてからも、二人は横並びに自転車を走らせ、あたしは二人の後ろを付いて行く格好になった。


何?この状態。


あたしは膨れっ面のまま、自転車を走らせていた。
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