凪とスウェル
その後も、八神とはアホな話ばかりしていた。


学校でも基本、アホな会話しかしないけど。


それにしても…。


なんでコイツ、あたしを釣りに誘ったんだろう。


まぁ、いいけどさ。


そんなことを思っていたら。


「八神君…?」


後ろから可愛いらしい女の子の声が聞こえた。


聞き覚えのある声にドキッとして振り返ると、自転車に乗った湯本さんがあたし達のすぐ後ろに来ていた。


げっ、なんで湯本さんがここにいるの?


「おう、湯本」


「何してるの…?」


訝しそうに尋ねる湯本さん。


「何してるって、釣り」


「そ、それはわかるけど。どうしてすずちゃんと一緒にいるの?」


うっ、やばい…。


あたしと八神がこんなところに二人きりでいるのは、絶対まずいよね。


ど、どどどーしよう。


偶然会ったことにする?


いやいや。


たとえ偶然会ったとしても、あたしが八神の横に座っているのは、彼女からしたら許せない行為よね?


こ、困った。


なんて言い訳したら?


一人そわそわしていると、八神が急にあたしの手を取った。
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