ワーキングガールズ・クリスマス
元々ハスキーな千秋さんの声は、風邪のせいかいつもよりかさかさだった。


「ちいくんと約束したんですよね?
そりゃあ大事ですけど、千秋さんが倒れたら元も子もないでしょう!?」


どんだけ頑張るのよっ!?
もっと自分のこと大事にしなさいよ!?


心配だったはずなのにだんだん腹が立ってきて、弱々しく答える千秋さんにあたしは何故だかキレ気味。


あたしの腕の中では、ちいくんが心配そうに見上げている。


「ご、ごめんなさい……」


あたしの異様な剣幕に押されて、ゼイゼイ息を吐きながら千秋さんは素直に謝った。


「パパおこられてる……」


ポツリとちいくんが呟いた。


「とにかく!ベッド行きますよ!
ごめんねちいくんちょっとおりてくれるかな?
先生パパを運ぶから、パパのベッドまで連れていってくれる?」


「うん!わかった!」


あたしが笑顔になったことに安心したのか、ちいくんはシャキッと返事をしてあたしから離れて部屋の奥へ歩きだした。


ちょっと失礼しますと声をかけて、彼の腕を自分の首にかけてあたしは立ち上がる。


千秋さんはもう片方の腕で壁に手をつき、なんとか立ち上がることができた。


「よ、いしょ……」


千秋さんをベッドに下ろして布団をかける。


そこで様々なドッと疲れが溢れ出て、あたしは床にへたり込んだ。


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