ワーキングガールズ・クリスマス
嘘、やだ、消えないで。


そう願うのに、二人は目の前で消えていったーーー。



「……待ってっ!!」


がばりと起き上がるも見覚えのない部屋で、焦って辺りを見渡すと眠る前と変わらない山口家だと思い出した。


「弥生さん?大丈夫ですか?」


キッチンでスポーツドリンクのペットボトルに口をつけていた千秋さんが、心配そうに眉を下げてこちらへ歩いてきた。


窓から朝日が差し込んでいて、何時間か眠ってしまったことを教えてくれる。


「ち、あきさん……風邪は」


「あなたのお陰ですっかり良くなりました。
まだ少し喉はかさかさしますけど、もう大丈夫です」


ありがとうございました、そう言って頭を下げる彼のサラサラ動く茶髪を、いまだ夢と現実の狭間にいるあたしはぼんやりと見ていた。


一体なんだったの、あの夢。


千秋さんに昨夜のことを問われるまま答えている間、あたしの頭はそのことでいっぱいだった。

本当にあんなふうに突然、二人が消えてしまったら。


考えただけで胸が張り裂けそうになって。


泣きそうなのを千秋さんに悟られたくなくて、涙が溢れてくるのを必死で堪えて笑顔をつくる。


「弥生さん、本当に大丈夫ですか?」


けれど敏い彼は、あたしのそんな些細な変化にも気づいてしまう。


やめて、そんな風に心配なんてされたら、勘違いしそうになる。


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