やくたたずの恋
 敦也は大声を上げると、保護者のような表情を浮かべ、雛子を見た。
「お前が選ぶ女性にしては、雰囲気が違うような気がしたんだ、彼女は。まるで、昔の志帆……」
「はーい! そこまで!」
 敦也の言葉を切るように、恭平は声を上げる。そして敦也の前へと進み、眉をぴくりと上げた。
「……さっさと決めろ。この女でいいのか、それとも他の女がいいのか」
 凄みを見せる恭平に、敦也は数秒考えた後、「……分かった」と頷いた。そして恭平を押し退け、雛子の前へと進み出る。
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