やくたたずの恋
 凛々しい表情の「恭平さん」。そして目の前にいる、この男。
 その二つを交互に見る。雛子の気力をため込んだダムが、一気に干からびていく。
「お! 懐かしいな! その写真、まだあったのか!」
 手慣れたスリのように、恭平は雛子の手から写真を取り上げた。それを、彼の隣にいる巨乳女も覗き込む。
「え? これって影山ちゃん?」
「ああ。確か、俺が家から飛び出す前の、成人式の時に撮った写真だから……12年前ぐらい前のヤツかな? まだ大学に行ってた頃だよ」
「やだー! 影山ちゃん、超イケメンじゃん! カッコいいー! ピチピチしてるー! 食べちゃいたーい!」
 女が叫べば、その赤い唇もクネクネと動く。本当に食べてしまいそうな勢いだ。そんな女の様子を満足げに見て、恭平はふふん、と鼻を鳴らす。
「だろ? ま、俺は今でも超イケメンでカッコいいけどな!」
 そ、それはどうかな?
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