やくたたずの恋
「お嬢さんはさぁ、借金のカタに見知らぬ男に自分の身を差し出しても、平気な訳? お供え物みたいな扱い受けてんだぜ? それって、人間に対する扱いじゃねぇだろ?」
 恭平の言葉は、グサグサと音を立てて雛子に突き刺さる。痛い。それは父によって傷つけられた心に、塩を塗り込む痛さだ。
 じんじんとリズムを刻む痛みは、雛子を小さな子どもに変えていく。「役立たず」と父に言われ続けて、泣きじゃくっていたあの頃の自分に。
 その記憶は、痛みを一層強めていく。それに耐えかねて、雛子は更に涙の量を増やし、「それでも、いいんです」と呟いた。
「……それが、私の役目ですから。この役目を果たさないと、私は役立たずになってしまうんです」
「へぇ!」
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