やくたたずの恋
 その瞬間、雛子は息を止めた。マズい。バレてる。隠しておいた0点のテストが、親に見つかってしまったような、しくじった感じ。
 雛子の色白の童顔が、焦りの色で染まっていく。それを楽しげに見つめながら、恭平は彼女を更に崖っぷちへと追いつめる。
「つまり……横田議員は、うちの親父にかなりの額の借金があるってことだろ? 一人娘のあんたを、俺に差し出すぐらいなんだからさ」
 事実だが、「はいそうです」とは言えない。溢れた涙が、頬に筋を作る。その冷たさが、反論する力さえも、雛子から奪っていく。
< 16 / 464 >

この作品をシェア

pagetop