やくたたずの恋
「影山ちゃん、この子、誰? 新人さん?」
 太いアイラインとつけまつげで縁取られた、猫のような大きな瞳。女はそれを雛子に向け、首を傾げた。恭平はすぐさま、「違う違う!」と手を振って否定する。
「このお嬢さんはね、新聞の勧誘の人だよ。俺、新聞読まないって言ってんのに、新聞取ってくれって、うるさいの何のって」
 俺、マジで困ってます。そんな感じで肩を落とすと、恭平は完璧に作り上げた営業スマイルを雛子に向けた。
「じゃ、そういうことで! 新聞屋さん、ご苦労様でした!」
 その言葉と同時に、雛子の目の前でドアが閉まった。
 何が起こったのかも把握できないまま、結婚相手(仮)である恭平との初対面は終わってしまった。
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