やくたたずの恋
 それに、この結婚がうまくいけば、きっと父も自分を見直してくれるだろう。「役立たず」と言われ続けていた自分が、やっと父の役に立てる。そして、母も喜んでくれるに違いない。
 その幸せな道のりへと導いてくれる「恭平さん」が、ここにいるのだ。この素敵な、私の夫となるべき人が!
 雛子は「恭平さん」の写真を抱き締め、震える指をチャイムに伸ばした。
 あ、ちょっと待って。
 雛子は指を引っ込め、バッグの中から手鏡を取り出した。
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