やくたたずの恋
 肩までの髪には、うねりも乱れもない。メイクも自然な感じだし、唇も程良くグロスで濡れている。この素敵な「恭平さん」に会うのだから、少しは大人っぽく見せたい、と今日は淡いパープルのアンサンブルに、ツイードのスカートを合わせてみた。
 うん。これなら大丈夫よね。
 ふわふわと浮き立つ心を抑え、手鏡をしまう。そして再び腕を伸ばし、チャイムを押した。ウェディングベルにも聞こえるチャイムの音が鳴り、しばらくするとドアが開いた。
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