やくたたずの恋
 納得のいかない表情のまま、雛子は立ち尽くしていた。影山社長は不意に立ち上がり、雛子の前にやって来ると、ポンと彼女の肩を叩いた。
「雛子ちゃん、頼んだよ。わしは、雛子ちゃんだからこそ、せがれの説得を頼んでいるんだ。君があいつをわしの下に連れ戻し、結婚する。それは、雛子ちゃんでなくてはできんことだ」
「は、はい」
 期待されることは、嬉しくない訳ではない。だが、果たしてそこまでの期待に応えられるのか。雛子の心には、不安だけが漂っていた。
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