やくたたずの恋

     * * *


「あら。雛子、帰ってたの?」
 雛子がリビングに入ると、母が外出から戻ってきたところだった。
 影山社長が言っていた通り、雛子の母はとても美しい人だった。若い頃から、その美しさは地元でも有名だった、と雛子は祖父母から聞かされたことがあった。
 しかも、出身地の群馬県高崎市では、名物の高崎観音にかけて「観音美人」という、ありがたみがあるようないような、微妙なあだ名をつけられていたらしい、と。
 でも確かに、これだけ美しい母を見れば、観音様に出会えたような気分にもなるだろう。優しい光を放つ、母の観音スマイルに照らされ、雛子は一気に緊張が解けていく。
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