やくたたずの恋
「私、諦めたくないんです!」
 雛子はドアから体を離す。ぴょん、とバネで跳ねるように通路に飛び出し、恭平と悦子に向かって、早足で進んでいく。
「私の父のためにも、影山社長のためにも、どうしても恭平さんと結婚したいんです!」
「昨日、断っただろうが! 俺はお前となんて、結婚する気はさらさらねぇよ!」
「嫌です! 私と結婚してください!」
「俺はそれが嫌なんだよ! 何度も言ってるだろ? 俺は結婚なんてし・ま・せ・ん! 日本語、分かんねーのかよ? キャンユーアンダースタンドジャパニーズ!?」
「アンダースタンドしてますよ! でも、どうしても、お願いしたいんです!」
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