ラヴィ~四神神葬~
 刹那。

 キラリ、と・・・

 ひとひらの雪がひらぎ飛んだ。

 化物の背後に回り込んだ総司が右手を突き出す。
 右手が《雪》を生む。

 一閃。

 鋼の腕が二つにちぎれた。
 化物の腕がひび割れ、瓦解する。
 光が覇妖を喰い破る。
 ・・・いや、それは真夏の陽光に照らされた氷の破片だ。
 青白い微光は失われ、冷たい輝きに包まれた覇妖が凍りつく。壊れていく覇妖の腕が光り輝く氷の砂となる。陽光を乱反射して、キラキラ、きらびやかに・・・

「―散れ」

 廃屋に氷の破片が降り注ぐ。
 遥か頭上、天窓から差し込んだ熱と光に混ざり合って、散り散りに足元に散らばった氷の砂が融けていく。

 ―その時だ。

 静寂は砕けた。
 床が、壁が、空気が裂ける。
 床から伸びた白い手が、総司の脚を、腕を掴んだ。
(これは・・・)

 片腕の化物の本体だ。
 総司が覇妖の腕を振り切ろうともがくが、夏のツタの如く絡みついてくる何十本もの腕にたちまち自由は奪われた。

 首に、肩に、肘に、胴に、大腿に絡みついた白く細い腕。

 何十体と群れを成し、集合して、一本の巨大な腕を形成していた覇妖が、総司の一撃を機にバラバラに分解し元の姿に戻った。
(だけど、なぜ・・・)
 攻撃意識の高い覇妖はテリトリーを持っている。
 なのに、なぜ。
(こんなに狭い場所に、これ程の数が密集しているんだ?)

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