ラヴィ~四神神葬~
「おいっ」
 急に腕をつかまれた雅樹が驚いて振り払おうとする。だけど総司は離さない。
「卓也の所に行くぞ」
「何度も言わせんな。俺は行かな・・・」
「お前の力を貸してくれ」
 黒瞳が雅樹を見つめる。
(ここに留まらせちゃダメだ。あの覇妖達のように・・・)
 過去に固執し、過去に囚われてしまわないように。未来を否定してしまわないように。
 今、雅樹が前に進めないなら、導いてやればいい。
(踏み出す勇気を、俺が与えればいい)

 だから、この手は離さない。

 ―仕方ねぇ。
 そう答える代わりに、チィっと雅樹は舌打ちした。

「なにぼーっとしてるんだよ。お前から言い出したんだろうが」
 腕を振り払った雅樹が総司をにらんだ。
 総司は小さく笑った。雅樹に見つからないように。

 二人は駆け出した。光差す方向へ。
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