ラヴィ~四神神葬~
「残念だけど、二つ目の質問には正確に答えることはできない。なぜならオレ自身でさえ、よく分からないから。自分にどうして、こんな《力》があるのか・・・」
 無風状態であるにもかかわらず、大樹が揺れ、梢が大きくしなり出した。葉はサラサラと散り急ぐ。
「ただ一つ、言えること。それは・・・」

 気流が変化した。
 木の葉が渦を巻きながら真の手の中に集まり、別の物質(かたち)をつくる。原子レベルまで分解され、再び結合する。規則正しい分子配列を組んだ「それ」は、今や木の葉ではない。

「薔薇の花・・・!まさか病室の花は」
「よく思い出してごらんよ。その花は何色だった?」

 薔薇のつぼみが開く。
 病室に置かれていた薔薇の花束は、燃える真紅の色だった。
 しかし今、目の前に存在する花は、

 漆黒。

 「死」を意味する、黒薔薇。

「悪いけど、男に花を贈る趣味はないんだ」
 花が散る。
 漆黒の花弁が卓也を切り裂く。腕を、胸を、頬を―黒い花びらが血染まる。
「ただ一つだけ言える真実がある。それは、オレがお前の命をもらい受けに来たということさ。・・・なんて今更、言うまでもないけれどね」
 一つ、赤い花弁を踏む。
「何もかも・・・何一つ不自由なく、手に入れているお前が許せないんだ」
 花弁が宙に浮き上がった。
 花びらだけではない。
 葉も、砂も、小石までも。
「こんな気持ち、お前に話したってムダだろうけど」
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