ワガママ狼男と同居始めました。
何…………?
2つの目は徐々に私に近づく。
暗くてよく見えない……。
志木なの……?
鋭い目から、それが狼であることだけは分かった。
もしかしたら昨日見た狼かもしれない……。
「あなたは志木…………?」
風の音でその狼が言葉を発したのかさえ分からなかった。
頭の中に志木の顔が浮かぶ。
他の女の子達は志木のことなんにも知らないくせに。
どうして『好き』だなんて言うの?
誰も志木の本質を見ていない。
志木は本当は全然優しくないのに、本当の本当は優しい。
狼になった志木はすごくあったかい。
私だって。
あの夜志木を拾わなかったら、今頃岡田ちゃん達とおんなじこと言うはずだ。
ただ知ってるだけだ。
『ペアがお前でよかったよ』
志木は自分の正体を知られることを恐れてる。
きっと知られてしまったら、気味悪がられて、『妖怪』としていろんな人に研究されるんだろう。
じゃあ私が『知ってる』ってことはすごいことなのかな……。