世界一幸せな国Ⅰ
男A「そ。じゃ、遠慮なく。……別に何もしやしない。君たちが大人しくしていれば、ね」


「……場合によるな。目的はなんだ。金か?地位か?」



場合によっては喧嘩をする。


私が言った場合によるは、そんな意味だ。



自分と、ユアンと、お兄様たち。そして、両親。


全員を守るために拳を使う。



こんなのはただのエゴだ。

それも分かった上で。



男A「うーん……全部かなぁ?いや、強いて言うならば、地位か。俺たちの方がお前らより上なんだよ。俺たちがどれだけ努力しても手に入れられないものを、お前たちは持っている!俺たちの努力が認められないのは、俺たちにその地位が与えられないのは、お前たちがいるからだ!!お前たちがいなくなったら、俺たちは幸せになれるんだよっ!!地位も、金も、権利も、人脈も……!!俺たちが努力しても手に入れられないものを、お前たちは、生まれながらに持っているんだよ!なんで、俺たちはこんなに頑張らなきゃいけねえのにお前らはのうのうと座ってんだよ!!」





初めて、貴族社会の実態を目の当たりにした瞬間だった。


ユ「てめぇ、俺たちの家族が努力してないだと?!何も知らねえくせにそんな口叩くんじゃねぇよ、あぁ?!そうやっていうやつがいるから俺たちだって努力してんだよ!てめぇらが勉強や魔法の練習始める頃には使いこなせてなきゃならねえんだよ!!当然のような顔をされるから、必要以上になんでもできなきゃならねぇ。家の外に出ればボールドウィンという名を背負うからってブランドに合わせた行動を取らなきゃならねぇ。てめぇが思ってるほど貴族は甘くはねぇよ!!そして、そんなやつに国王が地位なんざ渡すわけねーだろーがっ!!」



今まで黙っていたユアンの怒りが、とうとう爆発した。


しかし、これでは売り言葉に買い言葉だ。


埒があかない。



やっぱり、方法は拳しかない。

馬鹿な私にはそれしか思いつかない。



──やろう。


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