世界一幸せな国Ⅰ

「討伐指令……そんなの出てたんだ。条件とかはないの?」


ユ「ないよ。報酬は、貴族社会らしく土地とお金みたいだね」



「そんなの、みんな討伐に行ってるんじゃないの?」



ユ「それが、ニュースみて怖気付いちゃってるらしいんだ。……いい力試しになると思わない?」




普段大人しいユアンは、本当は戦闘馬鹿だ。


戦うことに目がない。



「そうだね。でも、平和的解決が1番だからね?向こうに改心の意思がなかったら力試しと行こうか」




ユ「うん!それでさ、向こうは夜行性だから行くのは夜になりそうなんだけど、その前にどこかに出かけない?」



ユアンは、防音シールドを外した。


もう聞かれても構わないからだろう。



「お、いいねぇ。私たち、まだこの辺のこと全然知らないもんね!」



何も考えずにそう返すと、ユアンの目の色が、口角が、表情が、ガラリと変わった。




ユ「本当に?!いいの?!やったぁ!!初デートだ!!」



あ、なるほど。と納得すると同時に、耳元や頬までかぁっと体温が上がって行くのを感じた。




「……あ。いや、デートって……そんな……あの……」



ユ「楽しみだね、藍乃!」



ユアンが私のことを藍乃として、彼女として呼んでいるのにも気づかないぐらい、私は落ち着いていなくて、心臓が煩く鳴っているのを全身で感じた。



「そうだね」



そう返すのに精一杯なぐらい、頭の中がいっぱいになった。


どうすればいいのかわからず俯いていた顔を上げると、ユアンが同じく真っ赤な顔でこちらに微笑んでいた。

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