信心理論
僕は、うつ伏せになっていたベッドから跳ね起きた。

ゆらりゆらり、とゆれるカーテンの横に、アイツが立っていた。


「なっっ…???!!」

言葉の続きが出て来ない。


1歩、また1歩と僕は後ずさりする。


「歌が聞こえたから。これ、レコードの復刻版だよね?あたしこの人好きだったんだぁ。」

昼間のように、ケラケラと笑いながら、彼女は窓のふちに腰掛けた。


「お前…本当に…?」

「あ、ようやく信じてくれた?だから言ったでしょ?あたしは、幽霊なの。」


ふわり。


本当に、舞い降りるように彼女は部屋の中心へと移動した。

その長い髪と、白い服が、より僕に天界からの使者の名を連想させた。


「まさか、貴方がかけてたなんて。あたしたち、趣味が合いそうね。」

おどけたように言うその表情は、昨日僕が最後に見た彼女の顔とは、全く違うものだった。


そう。彼女はまるで本当に生きていて、本当にそこに存在しているかのようだ。


けれど実際は、目の前の彼女は彼女の魂でしかないのに。



不思議な感覚は、僕を支配し続ける。
僕は軽い目眩を覚えて、ベッドに腰掛ける。


「まぁ、そうなるのも無理はないよね。あたしだって、自分が死んだってことをすぐには理解出来なかったもん。」


彼女は僕の隣に静かに座った。

「人が死ぬとどうなるか、なんて生きてる内はわからないから、生きてる人が死んだ人間の存在を理解するなんて無理なのよ。だから貴方は混乱してるし、あたし自身も混乱した。」


ひとつ、ふぅっと息を吐いてから、彼女は続ける。

「でも、あたしはまだ良い方なのよ?そりゃあ、心残りがあるから此処に留まってるわけだけど。死んだ人間のなかには、自分が死んだってわからないまま生活している人もいる。今日あたしたちが出会った大学の中にも、そんな人たちがたくさんいたわ。」


「なんで、そんなことを僕に話すんだ…?僕には関係ないことなのに。」

僕は、部屋の床を見つめながら、彼女に問いた。


「あたしたちが…似ているから。かな?」



僕らが、似ている?



僕は、視線を彼女の方へ、ゆっくりと向けた。
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