誰かが言いました。
「熱があるわけでも、変なもの食べたわけでもないし。ましてやどっきりなんてもってのほか。

俺は、山田さんが好きです。俺と付き合ってください」


そんな、こんな私に真剣な顔で言わないでください。


加賀くんはみんなとふざけて笑っている方が合っているんだから。


私なんて釣り合わないんだから。


「それとも……俺のこと、嫌い?」


一瞬にして眉尻を下げて、しょぼんと効果音がついたような表情に、本気で私の心臓が撃ち抜かれると思った。


そんなわけない。嫌うわけがない。


私は慌てて大袈裟にブンブンと首を横に振った。


「よかった」


へにゃり、と笑った彼に殺されてもいいと思った。


それからは記憶があまりない。


たぶん私が「よろしくお願いします」と言って、どこからか現れた茜に「よかったねえ、紗枝ー!」と抱き着かれ、フリーズ状態の私の肩をがくがく揺すり、これまたどこからか現れた男子に茜が止められるまで、私はされるがままになっていた。


これは、付き合うことになったのだろうか。


絶対に手が届かない、届かなくてもしょうがないと思っていた加賀くんが、私の彼氏?


てことは、加賀くんは私のことが好きなのかな。


ぽっちゃりしていて絶対見向きもされないと思っていた私のことが、好き?


誰か、冗談だって言ってよ。


これは夢だって、早く夢から覚めさせてよ。


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