(短編)君に微熱
もう、何年前になるんだっけ。
別れてから。
そもそも付き合ったのは高一の頃、なんとなくコクってしまった俺に、彼女が何となくOKを出した。
そっから一年半くらい、意外と結構長く続いた気がする。
それで、俺からフッたんだ。
それも確か寒い冬の夕方とかで、近所の公園まであいつを呼び出して。
別れの言葉も、結構明確に覚えてる。
「俺はもうお前のことが好きじゃないし、お前も俺のこと、好きじゃないだろ?」
冷たい言葉にしないと、瞳は当たり前のようにまた、俺に話しかけるから。
わざときつい言い方をした。
本当は、俺があいつのことを好きじゃなくなったとかじゃない。
あいつが、和泉の方に気持ちが動いてると、悟ったから別れを切り出したんだ。
「より戻せばいいじゃん、俺たち」
本気に冗談を混ぜたような口調で、そう瞳に告げた。
どうせ、あいつは笑いながら「冗談やめてよ」っていうから、そしたらもう、きれいさっぱり忘れられる。
って、思ったから、ただの気紛れで言ってみただけだ。
「なに、酔ってるでしょ雅」
「酔ってないって言ったら?」
「・・・だって、私のこと、好きじゃないって言った」
そんなどうでもいい話、覚えてなくていいんだって。
だってそんなこと言われたら、あれは嘘で、ほんとはまだ好きだって言うほか、なくなるだろうが。