Golden Apple
でも、事情が事情だけにどうにもならない気もする。強硬手段を取るとすればキッシーが向こうへ移るとか…。
移るというのは、かなり面倒だ。あたしもそうだけれど、反感を買うし用意された居場所でも無い限り馴染めない。学校の奴等だって絡む相手が変わる。
キッシーがするには、リスクが高い。
こんな学生の街でこんな面倒なルールの中で生きる代償なのか。
長く溜め息を吐いた瞬間、目の前で車が停まった。派手な音。しかもワゴン車だ。
嫌な予感がして後ずさる。
「クーラーギーちゃん」
横を向くと同時に背中を蹴られた。鞄が手から離れる。地面に顔がつく寸前に腕を掴まれた。
「やべえだろ、顔に傷が付いたらミカミに殺されるぞ」