恋の相手はお隣さん。


「それは……違……」
「だったら天秤にかけるような真似するな」

苛立っているかのような鋭い眼差しに貫かれて、心臓が痛くなる。でも響にはさっきまでの怖さはなくて、それとは別の独特の空気を纏っていた。

「もう泣くな。お前に泣かれると、弱いんだ、俺は」

そう言って薄い口唇が近付くと、私のそれに重ねられた。

「ん……っ」

啄むようなキスに自然と口を開くと、待ち構えたように深く舌が挿しこまれる。
響のキスは、子供の悪戯にお仕置きするように、私を追い込んでいく。溺れそうになるのを必至で堪えると、響の腕をぎゅっと掴んだ。
圧しかかってくる重みが、体温が、私の身体に溶けていくみたいだ。キスが深くなるたびに、鼓動が大きく跳ねて飛ぶ。それは熱に浮かされた時の浮遊感に似て、ふわふわとして心地良かった。
このままずっと、こうしていたい。
そう思った直後、響がスッと離れた。戸惑っている私を見下ろし、するりと髪に指を通しながら口元だけで笑う。


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