恋の相手はお隣さん。


会社の人の前で、馴れ馴れしくしちゃいけなかったんだ。子供の私といるのが、恥ずかしいのかもしれない。

「紗英ちゃん? 私は、鈴井由香里(すずいゆかり)。上条くんとは同期なの」

よろしくね、と笑いながら差し出された手は、細い指と爪に施されたネイルが凄く綺麗だった。
この人だったら、響の隣に並んでいても、絶対妹だなんて思われない。
こんな綺麗な大人の女性が響の近くにいるんだって、改めて思い知らされる。
まざまざと自分との差を見せつけられて、差し出された手を握り返すことができずにいると、頭の上から響のため息が落ちてきた。

「悪い、鈴井。そろそろ帰らないと」
「そうね、ごめんなさい。時間取らせたわね」

鈴井さんは、態度がおかしい私を見ると、気にしていないという風に微笑した。

「ごめんなさいね、紗英ちゃん。上条くん、返すわね」

まるでそれは、子供をあやすような口調だった。
どうしてこの人が、響を自分のものみたいな言い方するの?


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