いろんなお話たち
星の子供
命の灯火とは時にあっけなく、目の前から消えてゆく。
生まれ落ちたこの世で、生きてゆく中で、出会う人々。
親、友人、尊敬する師、兄弟、――――愛しい人。
出逢うために生まれてきた。
ならば、何故別れがくるのか。
悲しいけれど、ちゃんとした別れならいい。
「さようなら」と手を振って別れるならいい。
泣いたって、最期に手を取って死に目を見届けられれば。

どうして 。


「かあ、さん…とうさ、ん…」
人の形をした真っ黒いソレ。
服はなんともないのに体だけが黒く焼け焦げた二つの亡骸に、少女は手を伸ばす。
手遅れだった。
シスターに呼ばれて家に帰ったら、もう、二人は。
「おお、主よ…。なぜこのような…」
傍らに佇む敬虔な信者が神に祈りを捧げるが、違う、と少女は頭を振った。
頭を振って、忌々しいこの体に唇を強く噛んだ。
もしもこれが、二人に与えられた罰というのなら、天に願うのは間違っている。
安らかに眠らせてなんてくれなかった神に祈るなど。
見ていた人の話によれば二人は突然燃え出したという。
そしてその炎は水も魔法も、何物も効果が無かったと。
「……」
母親の手に指先が触れるとパラパラと崩れ始め、瞬く間に砂となりどこからか吹いた風に飛ばされていった。
父親であった少し大きいもう1つの体も同じようにして跡形もなくなってしまった。
普通にいけば二人が先に旅立つことはわかってた。
でも、ある日突然、いきなりこんな、こんな形でさよならするなんてあんまりじゃないか。
二人の衣服をかき集め咽び泣く少女は、次の日には教会附属の学舎から姿を消した。
きちんと勉強をして将来安定した生活を送れるようにと両親が示した道を外れ、渡者となった。

皮肉にも二人のように世界の空を見るようになってから、

あの日から、

もう、

何十年。
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