君のイナイ季節
「生野!そこに真由ちゃんいる?」

かれんが頷く。


もう、いいって!!



あっという間に拓海くんは目の前にやって来て、

「しっかり捕まっててよ」

と、私を抱き上げた。



世に言う。



お姫様抱っこ。



一斉に女の子達の悲鳴が聞こえた。

「拓海くん!何すんの!?」

恥ずかしい!!


私は背中に回した手で拓海くんを叩く。

「大人しくしないと落ちるよ?」

チラリとこちらを見る拓海くん。

こんな至近距離、久々だし!!


胸が急に高鳴り出す。
大人しく、するしかなかった。


私を抱えているにも関わらず。

拓海くんは。

もの凄い速さで走り出し、一着ゴール。



「生野から聞いたよ。
ごめんね、真由ちゃん」

私を抱き抱えたまま、拓海くんが耳元で囁いた。

「わ…私こそ、ごめん」

その言葉で拓海くんはニヤッと笑い、ようやく私を降ろしてくれた。



そして借り物の内容を書いた用紙を係に渡していた。
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