君のイナイ季節
結局。

4万円近い指輪を買って貰って。

どうお返ししようか悩んだんだけど。

「お返しなんていらないからね」

なにもかも先を読まれていた。

「ただ…」

拓海くんは私の手を握って

「そばにいて欲しい」

…そんな事を言われたら

本当に倒れそうなんだけど。

「僕はいつも自分自身や周りと戦っているけれど、本当の自分を知っていて欲しい。
平気そうに見えても泣きそうな時もある」

拓海くんは私の手をギュッと握って

「我が儘かもしれないけど、いつも傍にいてほしいんだ」



帰りは家の近くまで送ってもらって。

「じゃあ、また明日」

拓海くんはそっと手を挙げてクルッと方向を変えて歩き出した。

私も手を振ったんだけど。

明日、また学校で会えるのに。

すごく寂しくなって。

その背中に抱きついていた。
< 39 / 205 >

この作品をシェア

pagetop