君のイナイ季節
「…彼氏が勝ってほしいとは思わないの?」

拓海くんがちょっと怒った様子で私を見た。

「勝ってほしいけど」

「じゃあなんで?」

「上手いからといって調子に乗らないで。天狗の彼氏なんていらないもん」

…言ってから後悔した。

調子になんか乗ってない、拓海くんは。

でも、あまりにも上手く行き過ぎるのは変な過信へと繋がっていく気がして。

難無く頂点へ立って後からどん底を見るよりは今、辛い事も経験しないと彼はこの先、私の知らない人柄になるかもしれない。

私は反らした視線を再び拓海くんに戻した。
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