君のイナイ季節
「…そう、見えるのか」

拓海くんはぐっと唇を噛み締めた。

私は慌てて訂正しようと思ったけど、

「そう見えるなら僕は無意識のうちにそうなっているのかもね」

どうしよう…

嫌な事を言っちゃった。

「ごめん、嫌な思いをさせて」

拓海くんはそう言って私をギュッと抱き寄せた。

あれ?

怒ってないの?



「やっぱり、最高の彼女だな」

耳元でそんな事を囁かれ、私は頭の先まで真っ赤になるのがわかった。

ふんわりと包み込むように拓海くんは私を抱きしめるのであまりにも心地良すぎてずっとこのままがいい。

って思ったんだけど。


「拓海〜、そろそろ戻るよ。仲イイのはわかるけど、続きは人のいないところで頼むよ」

そう、ここは病院の駐車場。

車の影で抱き合っていたら拓海くんのお父さんに見つかってしまった…
< 72 / 205 >

この作品をシェア

pagetop