城跡に咲く花〜使用人×王女〜
透き通った瞳が、なによりも雄弁に彼女の思いを伝えていた。
わたしのために死ぬことはないと。
けれど、感情がどうしてもついていかない。
嫌だ。
彼女を残してゆくなど考えられない。
「グレン、…ルシアを頼む。どうか無事に逃がしてくれ」
切に見上げてくる瞳を受け止めて、グレンは言葉が出なかった。
ルシアとはユリアの妹の名で、まだ5つの幼子だ。
いまは侍女の腕の中で泣き疲れて眠っている。
彼女は妹姫を自分に託すと言う。
絶望の中、グレンはやっとの思いで口を開いた。
「———承知しました」
彼女をここに置いてゆく。
誰よりも愛しいひとを———
それが彼女の望みだというのなら、グレンに他になにができるだろう。
頷くことしか選べるはずがなかった。
グレンは使用人で、ユリアと対等な関係になどなれはしないのだから。
わたしのために死ぬことはないと。
けれど、感情がどうしてもついていかない。
嫌だ。
彼女を残してゆくなど考えられない。
「グレン、…ルシアを頼む。どうか無事に逃がしてくれ」
切に見上げてくる瞳を受け止めて、グレンは言葉が出なかった。
ルシアとはユリアの妹の名で、まだ5つの幼子だ。
いまは侍女の腕の中で泣き疲れて眠っている。
彼女は妹姫を自分に託すと言う。
絶望の中、グレンはやっとの思いで口を開いた。
「———承知しました」
彼女をここに置いてゆく。
誰よりも愛しいひとを———
それが彼女の望みだというのなら、グレンに他になにができるだろう。
頷くことしか選べるはずがなかった。
グレンは使用人で、ユリアと対等な関係になどなれはしないのだから。