大嫌いな最愛の彼氏【短編】
しかし愛華は、悲しそうな顔で、彪河の手を払いのけた。


「解んねぇよ……!お前は、誰でも構わず相手しちまうような、女ったらしじゃなかったのかよ!?いきなりそんな事言われたって………アタシがアンタをどう想ってんのかなんて、解るはずねぇよ……」


彪河は、払いのけられた自分の手を見つめ、か細い声で囁いた。


「そっか……そうだよな…」


『ごめん…』彪河は愛華の顔も見ずに、玄関の方へと歩き出した。

呆然と彪河の背中を見つめる愛華。

アタシは…彪河にあんな想いをさせるつもりで言ったんじゃない。

心に渦巻く不快感。

何でそんな悲しそうな顔すんだよ……

何でそんなに弱気なんだだよ……

何で……

何時もの彪河じゃないんだよ…



そう思ったら、目頭が熱くなった。

いとも簡単に緩んでいく涙腺。

自分で必死に抑えようとしても、涙は次々溢れ出る。


「なぁに…泣いてんだよ……」


愛華は、ボソッと呟くと、一人残ったリビングで、ひたすら泣き続けた。


この蟠りのようなモノは、一体何だろうか。

苛立ち?

不満?

悔しさ?


どれも違う………。


今のアタシの心には…アンタしかいない。

アンタ以外、浮かんでこねぇんだよ。


あれだけ大嫌いだと思ってきたのに。

いきなり告白されて…簡単に心が傾いてる。

なんか……スゲェ軽い女みてぇじゃん。


愛華は自分の心に問い詰める。


アタシは……彪河をどう思ってんだよ?

告白されたから好き?


ちげぇだろ……



愛華はキュッ…と力を込めて、唇を噛み締めた。


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