光 (ver.2005)
海に程近い、下町にその家はあった。
が、既に引っ越した後のようだった。
ドアチャイムを押すと、やつれた感じの老婆が出てきた。
老婆は、今年の初めからここに住み始めたという事だった。
僕は、大家の家に行き、そのアパートを管理している
不動産会社の社員の振りをして、
友人の転居先を聞くことに成功した。
未納分の家賃を請求するためだといったら、すぐに答えた。
その後大家に、このアパートの管理をやめるのだけは勘弁してくれと何度も頭を下げられた。

地下鉄を乗り継ぎ、その転居先に行った。
広そうなデザイナーズマンションで、建物の玄関自体がナンバーロックになっていた。
誰かが通った隙に滑り込もうと思ったが、もう深夜ということもあり、
人の気配がない。
ルームナンバーを押して呼び出せば、住人とはなすことも出来るのだろうが、
そんなことは出来ない。
警戒されてしまう。

雪が降りそうなくらい、物凄く寒かったが。
今日はこのあたりで野宿することにした。
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