相容れない二人の恋の行方は

26 甘いものは苦手

 午後、新谷ご要望のタルトが売っている新店舗にはすでに大行列が出来ていた。
 あと数か月我慢すれば行列もなくなりすんなり買えるようになるだろうに。そもそも、わざわざ休日に来ることが間違っている……
 頭の中でグチグチ文句を言いながら大行列の最後尾に向かって歩いて行こうとすると、店の入り口から出てきた女性がこちらに向かって手を振り駆け寄ってきた。

「やっぱりそうだ! 真由子ちゃーん! 千智!」
「木崎さん!」

 店から出てきたのは木崎さんだった。

「まな。何してんの?」
「何って。今日珍しく週末にお休みが取れたの。見てよコレ。開店時間に来たんだけどすでに行列が出来ていて、一時間並んでやっと買えたのよ!」

 木崎さんはスイーツの入った箱が入るビニールをかざしてみせた。

「もしかして二人も買いに来たの?」
「はい」
「もしかしてお目当てはタルト? 残念だけどもうすぐ売り切れちゃうよ。焼き菓子類はどんどん補充されていたけど」
「そうですか」

 残念でもなんでもなく、むしろ行列に並ばずに帰ることが出来ると思い私は内心喜んでいた。

「もしよかったら一緒に食べない? 家族の分とは別に余分に買ってるの」
「いいの?」
「うん!」
「じゃあ、ここから近いしウチ来いよ」

 あっという間に話は決まり、二人は私を置き去りにして先を歩いて行く。
 すぐに木崎さんが振り返り、「何してるの? 真由子ちゃん! 早く!」と可愛らしい笑顔を向けながらこちらへと来て私の隣に並んだ。並んで歩くことに居心地の悪さを感じながらも、まっすぐにマンションへと向かった。

< 117 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop