相容れない二人の恋の行方は
 いつの間にかその場に座り込み、じっと心の中で自問自答している、その時だった。
 カチャっとゆっくりリビングの扉が開く音がして、そのまま音の鳴るほうに背を向けたままびくっと肩を震わせた。

「……いた。やっぱここだったか」

 聞こえてきた声が新谷で安心したのは一瞬、すぐに緊張が走る。足音が近づいてくるにつれ胸の鼓動も高まる。

「ど、どうやってここまで!? お金、持ってないはずじゃ……」

 私の言葉にぴたっと足音が止まる。

「弘毅に借りた。……一番、借りを作りたくないやつに」
「そう……」
「暗い。電気もつけずに何してるんだよ。つけていい?」
「だっ……だめっ!!」

 思いのほか大きく響いた声に、自分でも驚いてはっとする。

「ご、ごめんなさい、私、今ちょっと……おかしくなちゃってて……少し、」

 一人にしてください、そう告げるようとするより前に目の前に人影が出来る。

「どうしたんだよ」

 そして座り込む私に目線を合わせるようにしゃがみ込むと、薄暗い部屋でも月明かりではっきりと相手の表情が見える。再会してからは特に、じっくりと見ることのなかった顔。冷たいけど緩やかで綺麗な形をした瞳、瑞々しい健康的な肌、バランスのとれた上品な顔立ちはあの頃と同じ。はじめて、出会った日と……

「わっ……わわっ!」

 頭の中に突如蘇る記憶と今の急接近している状況が一度に押し寄せてきて慌てて逃げるようにして新谷から身を守るようにして距離を取った。
 失礼な態度に気を悪くしてもおかしくなかったけど、新谷は不思議そうな表情で私を眺めている。そして少しの沈黙のあと、まったくわけのわからないことを言い出したのだ。

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