相容れない二人の恋の行方は
「えぇぇぇぇ!? なっ……! な、な、何言ってるんですか!? 正気ですか!?」
「……ま、予想通りの反応かな」
「あ、当たり前じゃないですか。びっくりしますよ、そんな、いきなり……!」
「いきなり、か。でもちょっと前から考えてはいたよ」
「……え?」
「きっかけは真由子の家に行ったとき。今までに少しも自分の選択肢になかった職業だったけど意識し始めて色々調べたら挑戦し甲斐があるなって」
「挑戦て……生半可な気持ちじゃ絶対に」
「難しい道だって言うのは分かってる」
「なんで、急に……」

 言葉を交わしながら、途中から新谷は夜景が見渡せる部屋の行き辺りまで行くと振り返った。

「理由か。色々あるけど。たとえば……少し責任を感じているんだ」
「責任?」
「高校の時、真由子を連れまわしてしまったから。その道に行きたいと少なからずは思ってた真由子の目標の邪魔してしまったのかなって。考えてみればあの時は一番重要な時期だったと思うし」
「別に私は……。ま、まぁ高校の時は自分の頭の良さに自信を持っていたから自分なら弁護士になれるっていう変な自信もあったけど、でもやっぱり大学に進学して少し勉強しだしたら自分には無理だと分かって……。でも、私の邪魔をしたとか、あなたが目指すことになる理由になります?」
「どうかな。ま、一番の理由は別にあるんだけどさ」

 新谷は目を伏せ「ははっ」と柔らかに笑うと身体を反転させ背を向けた。
 私は少し離れた場所で隣に並んで同じように夜景の大パノラマを目の前にした。
 一番の理由って何よ……?
 でも、この時は突っ込んで聞く気が起こらなかった。私は目の前に広がる夜景をただ無言でぼうっと眺めていた。

< 163 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop