相容れない二人の恋の行方は

番外編1:新谷視点(3)高2~高3

 退屈だった高校生活も、進学して一年が過ぎた頃、一つ、自分にとって大きな変化があった。
 執事の島田が体調を崩して入院し、大事には至らなかったが高齢ということもあり職を辞することになり新しい世話係がやってきた。

「お出かけですか、千智様」

 玄関口で女性に呼び止められ振り返る。ウチに来る前は長年名家に仕えてきたという彼女の名前は倉橋。
 ウチに来てからはウチのすべての使用人を束ね、教育し、僕の身の周りの世話もしてくれる。業務の正確さとスピード、まるでロボットのようにそつなく無駄なく動く彼女の存在にもようやく慣れてきた。

「うん。帰りは遅くならないようにする」
「いってらっしゃいませ」

 長年仕え家族の信頼も厚く、家族同然のような密な関係を築いていた島田と違い、最近ウチにやってきたばかりの倉橋は僕のプライベートにまで干渉してくることはない。
 彼女がウチに仕えるようになってからは、ある程度、僕も行動の自由が許されるようになったのだ。

< 184 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop