相容れない二人の恋の行方は


 タバコの煙やバイクのエンジン音。
 僕が通う学院内には決していないような、派手だったり、奇抜な制服の着こなしをした多くの学生の中心に僕はいた。

「おーい! 千智~」

 遅れてやってきた男が手をヒラヒラと振りながら近づいてくる。

「あれ? 今日も私服? おまえ、いっつも一度家に帰るよな」
「いいだろ別に」

 放課後は隣町の〝たまり場に〝行くことが日課になっていた。もちろん、他の奴らと違って僕は一度家に帰って制服を脱いでからだ。
 制服姿で出歩けばそれだけで目立つし、有名校に通っていることもここの奴らにはあまり知られたくない。
 といっても、いつも一人だけ馴れ馴れしく接してくるこの弘毅は僕の通う高校を知っているはずだ。なぜなら一番最初にこいつに出会った時には僕は制服姿だったからだ。
 夏ごろに生徒会の用事があって外を出歩いていた時、……なんだったかな。忘れたけど訳の分からない難癖をつけられて絡んできたのが弘毅とその仲間たちだった。それ以降、色々あってこうして放課後ほぼ毎日顔を合わせる間柄になったのだ。

 僕の事情を知らない弘毅は僕の姿を見て疑問を口にしながらも、あまり興味がないのかしつこく聞いたり詮索して来ることもないし、僕が通う高校のことを他の奴らに言うこともない。ちなみに、最初に出会った弘毅以外の他の仲間たちには少し脅してしっかりと口止めをしてある。

 遊び盛りのやんちゃな高校生が集まる場所。ココは、前までは僕には縁遠い世界だった。今は知らなかった世界をたくさん見せてくれる場所だ。
 いい子ちゃんで通してきた、自分でも知らなかった本当の自分の姿が出はじめたのは、こうして外を出歩いて外の人間と接するようになってからだ。

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