相容れない二人の恋の行方は
「見ろよ、真由子。この春赴任してきた新任の履歴書の文字。すごく綺麗だ。小学校教師ってみんな字綺麗だよな~」
「……そうですね」
「真由子も綺麗な字書くよな。でも小さい。性格が出てるよな~もっと見やすい大きな字書けよ」
「はい……」

 時々、新谷の無駄話の相手。
 この人、真面目にやる気あるのだろうか……本格的な仕事初日にして不安。実際に経営のすべての権限を任されるようになる日はまだ先みたいだから、悠長に構えていられるのかもしれないが。
 新谷は窓際に行くと外を眺め「懐かしいな」と呟いた。

「懐かしいって……半年前まで通っていたんですよね?」

 私たちは今、栄華学院の大学敷地内にある建物の最上階の一室にいる。

「学生生活での思い出なんて、不良仲間と真由子くらいしかないよ」
「ないって……他には。だって、幼稚舎から通っていたんですよね?」
「ない。外に出ないでこの中だけで生活し続けていたら、たぶん何も思い出なんか残らなかった。それくらい、毎日が退屈だったよ」
「……」

 やっぱり社長や木崎さんが言っていたことは本当なのだろう。何も言葉を返すことが出来ない代わりに、昔は出来なかった質問をした。

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