クール上司と偽装レンアイ!?
異動。

宣告された後15分位話をしたけど、正直何を話したのか覚えてない。

心の中はズタズタで、それを表に出さないように取り繕うので必死だったから。

「分かりました」

そう返事をするので精一杯だった。



会議室を出て購買部のフロアに戻ると、異変に気付いた。

さっきまで皆慌しく仕事をしていたのに、今はなぜか葵の周りに人が集まってやけに盛り上がっている。

……何だろう?

葵が雑談の中心になるなんて滅多に無い光景だけど、雰囲気的に仕事の話じゃ無い感じだし。

戸惑っていると一番端に居た、新入社員の子が私に気付いてニコニコと笑顔で声をかけて来た。

「広瀬さん、どこ行ってたんですか? 凄いニュースが有るんですよ!」

今の私の心境だとその高いテンションについて行けないんだけど、落ち込んでるところをあからさまに出すわけには行かないから、なんとか笑顔を作った。

「何が有ったの?」

「今度、神崎さんのグループが表彰されるんです」

「表彰って……社長が賞状くれる、あれ?」

私達の会社には毎年、会社に最も貢献したチームと個人が表彰されるイベントが有る。

滅多に顔を見る事の無い社長自らが表彰し豪華な副賞まで出る。

それに購買部の葵のグループが選ばれたって事?

「神崎さんは個人でも受賞ですよ。こっちは前の部署での仕事に対してなんだけど。でも購買部の方は皆の受賞ですからね」

新入社員の子も一応グループの一員だからかなり喜んでる。

「……凄いね」

葵は本当に凄い。

購買部が選ばれたのだって葵の力が大きいんだろうし。

視線を感じてその方向を向くと、沢山の人に囲まれた葵が私をじっと見つめていた。

この中で一番盛り上がってないって断言出来る、いつもの少し不機嫌そうな顔。

私はどうしてか真っ直ぐ見つめる事が出来なくなって、さり気無く葵から目を反らした。


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