クール上司と偽装レンアイ!?
「私の何が悪いの? なぜ彼女を選ぶの?」

葵の顔から笑みが消える。

「なぜ? お前、昔、自分がやった事忘れたのか?」

今までで一番、冷酷な声。朝井さんの体が微かに震えたような気がした。

「あの時は……確かに私は葵を裏切ったけど……でも、間違ってたって気付いたの! ずっと後悔していた。だから今こうして葵とやり直したいって言ってるのよ!」

動揺が激しいのか朝井さんの声は震えている。目には涙が滲んで見える。

私は何も言えず、ただ事態を見守る事しか出来なかった。

葵は本気で朝井さんを好きだったはずだ。その彼女にここまで懇願されて心が動かない訳がない。

後悔していると言った朝井さんを葵は許すかもしれない。

私の手は……離されてしまうかもしれない。

この先を知るのが恐いのに、朝井さんの言葉は止まらない。

「葵が怒ってるのは当然だと思う。それでも葵はあの時私を助けてくれたでしょ? 再会してからも一度も私を責めなかった。私、許されたんだと思ってた」

朝井さんは悲しそうな目で葵を見つめる。

それでも葵の態度が軟化する事は無かった。
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