クール上司と偽装レンアイ!?
「朝井さんは……葵に何て言ったの?」

「錯乱していてまともな話し合いは出来なかった。藤原にははっきりと拒絶されて俺にも裏切りを知られて、冷静に考えられなくなったんだろ」

「それで別れたの?」

「ああ。そんな事になって一緒に居られる訳が無いだろ? とは言ってもしばらくの間は俺も自棄になって仕事に集中出来なかった。企画書の件は知られなかったけど、俺がまどかにふられたって噂は直ぐに広がったから、女に振られて仕事も出来なくなる男だって俺の評判は最悪だったな」

「でも……それは仕方ないよ。信じていた人に裏切られたんだもの。傷付かない人なんていないよ」

私にはその時の葵の気持ちが良く分かる。

目の前が真っ暗になり、崩れ落ちそうになる絶望。

失恋くらいでって簡単に言える感情じゃない。

「俺もおかしくなっていたけど、まどかはもっと精神的に危うかった。ある日、会社の重要書類を持ち出して、電車の中に置き忘れてしまったんだ」

「え?」

その話は真壁さんから聞いていた。

でも書類を失くしたのは朝井さんではなく葵で、それで左遷が決まったって話だったのに……実際は違うの?
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