もう一度あの庭で~中学生によるソフトテニスコーチング物語~
そして幸陽大学附属中学との練習試合の日が訪れた。
今回は新谷二中の生徒が幸陽大学附属中学校を訪れていた。
校門を入って右手にテニスコートが4つ並んでいる。
歴史ある学校であるにも関わらずテニスコートが綺麗に整備されているのは、部員達がしっかりと整備しているからなのだろう。
そんな小さな部分にも力の差は現れていはようにも感じる。
「っしゃあ一本!!」
「岡町てめぇ本気で追いかけろ!」
「後衛浅いぞ、叩かれて試合終わらせられてぇのか!?」
威勢の良い声が途切れることなく続く。
機敏な動き、覇気のある声。
40人近い部員の誰一人として手を抜く姿は見られない。
「うわ、凄い迫力だな」
「大会でもこうやって練習されると萎縮するよな」
匠と真平はさすがに上級生、落ち着いている。
「うわ、顧問こわっ!!」
「聞こえるからそういうの口に出さないでよ」
快太も普段通り。
マッキーは緊張からおどおどしているが頭は落ち着いているようだった。
翔太は少しだけ緊張していた。
そのことに気付いていた幸助が意地悪そうにからかう。
「コーチ顔色悪いですよ?はしっこで体育座りしてたらどうです?」
翔太は肩におかれた幸助の手を振り払う。
「まだまだできの悪い教え子たちを持つと不安でね。
でもま、やっぱりこの場所は嫌いになれない」
「翔太の顔をたてられるように頑張るよ」
翔太は幸助の横顔を見て笑った。
「・・・なんだよ?」
「いや、根っからのプレーヤーだなと思って」
「お前、意地悪いな・・・」
「幸助ほどじゃないよ」
二人で笑った。
翔太達は着替えを手早く済ませて、幸大附の顧問の元に向かい、整列する。
翔太と長谷川は一歩前に出る。
「この度は無理を聞いていただきありがとうございました。
今日は胸をお借りして合同練習、形式試合で学ばせて頂きます」
長谷川が礼をすると、幸大附顧問の八尾も小さく頭を下げた。
八尾はじっと翔太を見る。
「君が佐野くんか、ねがわくばプレーヤーとしての君とうちの生徒が対峙する姿を見たかったが」
「すいません」
翔太は少し悲しそうに笑っていた。
「では今からうちの普段のメニューをこなして、4ペアの団体戦をしようと思います。
生憎と今日はエースの片桐が熱で休んでいますがご了承頂きたい」
「はい宜しくお願いします」
「宜しくお願いします!!」
全員が頭を下げて腹から声を出した。
コートに響く声に、三人が武者震いを覚えていたのは誰も知らない。