たったひとりの君にだけ
「……あぁ、もういいけど!過ぎ去ったことだから!引きずっても仕方ないし!」
「おぉ、男前!」
無理矢理気持ちを切り替えようと強がっただけなのに。
別にこの状況で持ち上げられても嬉しくもなんともないんですけど。
しかも、さっき可愛かったってほざいたくせに真逆もいいとこなんですけど。
ヒートアップした自分を落ち着けるように盛大な溜息を吐く。
呆気なく消えていくことがやっぱり少し憎たらしく思えた。
「でも、友人なら一個言っといて」
ふんっという声は漏らさずに、そっぽを向いて腕を組む。
そして、何をと聞かれて即答する内容は、そんなのわかりきっていることでしょと思う。
「あの眼鏡はぜんっぜん似合ってないってこと」
念願のカフェを開店させて、大切な場所をこれからも大切にしたいのなら、そこまで気を遣ってほしい。
せっかくのいいものを無駄にしないでほしいと思う。
コーヒーは絶品だったし、接客レベルは高かったのだから。
それでも私は直接言えない。
賛辞も文句も。
失礼女の私は言える立場じゃない。
だったらその親友に頼むしか方法はない。
「じゃあ、今から行きます?」
「は?」
「直接言いに」
「行くわけないでしょ!」
人の話聞いてんのか。