たったひとりの君にだけ

だけど、彼の発した次の一言は。

能天気にこっそり褒めていたのが馬鹿馬鹿しいと思えるものだった。


「……芽久美さん」

「なによ」

「やっぱり優しいなぁと思って」

「は?」


突然、許可もなく話題変更するとは何事か。


「……なんなの、急に。意味不明なんだけど」

「だって、直輝とは一回しか会ったことないのに、そこまで気を遣えるんですもん」


彼はどこまで平和主義なんだろう。

それともただ、究極のポジティブシンキングなだけ?


「別に気なんて遣ってない。どこをどう捉えればそんな結論に至るわけ?私は言いたいことを好き勝手言ってるだけだから」

「いーえ、絶対に優しいと思います。二度と行けないって言ってるカフェに、そんな助言するんですもん」


やっぱり脳内お花畑なのかもしれない。
旧暦では春でも、体感的にはまだまだ先なのに。

それでも、菜の花畑で両手を空に爽やかに笑う、高階充が容易に想像出来てしまうから残念だ。
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