たったひとりの君にだけ
別に助言なんてしたわけじゃない。
ただ、見るに耐えなかっただけで。
見当違いもいいとこだ。
「優しいなぁ」
力尽くにでも今すぐその発言を撤回させてやりたい。
だけど、それが絶対的に不可能なのは。
私がほんの僅かでさえ武道をかじったことがないからという単純な理由の所為ではなくて。
多分、ここで枯れるほどの大声で全力否定を試みても。
優しい、優しくないのみっともない子供染みた言い合いになるだけだと思ったから。
初めて言葉を交わしてから、ほんの2ヶ月弱の間で。
私は彼が、見た目とは程遠い頑固な性格を持ち合わせていると感じていた。
特に、正月早々の看病のときには、病人の私にも容赦なく“アホ”と言って譲らなかったし。
それに、ついさっきの樹に対する態度でも、その片鱗を垣間見た。
そして。
いくら北極圏の真夜中並みの冷たさであしらわれ続けても、イヴ前日まで諦めてくれなかったこと。
あ、でもこれって頑固じゃなくてしつこいだけか。